○泉州南消防組合火災防御活動等要綱
令和4年3月22日
泉州南消防組合消防長訓令第4号
(消防活動の対象)
第1条 この訓令は、泉州南消防組合の基本的な火災防御活動等を示すものであり、各級指揮者及び隊員は安全かつ効率的な消防活動を行うため、本訓令を踏まえ、災害状況に応じて効率的な活動を実施すること。
(用語の定義)
第2条 この訓令における用語の定義は、泉州南消防組合警防規程(平成28年泉州南消防組合消防長訓令第8号。以下「警防規程」という。)の定めるところとし、その他の定義については、次のとおりとする。
(1) 予備注水とは、燃焼物周囲の可燃物等に対して、事前に放水しておくことをいう。
(2) スプレー注水とは、ストレート注水より筒先開度を広げたミスト状放水のことをいう。
(3) 大量・高圧放水とは、65mmホースを用いた放水銃若しくは65mm管鎗にて、筒先圧力0.35Mpa以上で放水することをいう。
(4) 延焼阻止線とは、路地、河川、耐火造建物や地物・構造物等を活用して延焼拡大防止を図るために定めた基準線をいう。
(5) ブロック内火災とは、周囲を建物に囲まれた中心部分にある建物での火災をいう。
(6) ブロック角火災とは、道路等の角に位置し、その他二面が隣接建物と面している建物での火災をいう。
(7) ブロック面火災とは、一面が道路等に面しており、その他の面が隣接建物と面している建物火災をいう。
(8) 静電気発生防止とは、衣服の摩擦等により発生した静電気を放水等により全身を濡らす及び定期的に地面等に直接触れ帯電した電荷を除去することをいう。
(9) スロップオーバー現象とは、高温となった燃焼している石油等の危険物に注水することで水が急激に沸騰し、タンク等から水蒸気とともに燃焼している危険物が急激に噴き出す現象をいう。
(10) ボイルオーバー現象とは、高温となった危険物内で、注水等によりタンクの下部に貯まった水が沸騰し、タンク等から水蒸気とともに燃焼している危険物が急激に噴き出す現象をいう。
(消防活動)
第3条 組織活動の原則は、次のとおりとする。
(1) 火災防御活動等における組織活動は、原則として最上級指揮者の命令によるものとする。
(2) 各級指揮者は、最上級指揮者の活動方針に基づき相互に密接な連携を図り、組織活動に徹し効率的な消防活動を行う。
2 中隊活動の原則
(1) 火災防御活動等における基本的な単位は中隊とする。
(2) 中隊長は、小隊長以下を指揮し、隊員の効率的な運用を図る。
(3) 中隊長は、配備された装備、資器材及び消防対象物に設置されている消防用設備等を活用し、中隊所属消防部隊等の有効的な活用に努める。
(4) 水利の水量不足や広範囲にわたる部署配置となる場合は、出動した消防部隊のうち必要な隊を水利部署させ、火点直近に部署したタンク車隊等に中継送水を実施し、多口放水など連携して活動させる。
(5) タンク車隊等は積載水の有効活用を図り、ガンタイプノズルを使用する際は、ノズル統一によりノズル特性を最大限に活かす。また、後着隊は、先着隊の資器材を有効に活用して活動し、多口放水となる場合は、ノズル統一に留意すること。
(6) 火点直近に必要部隊を集結させ、救助隊、先着隊及び後着隊は相互に連携し、人命救助及び効果的な消防活動に繋げる。
3 現場活動の原則
(1) 火災の現場活動は、人命救助を第一とした火災制圧活動とする。
ア 先着分隊長は、他隊と連携して次により人命救助活動を行う。
(ア) 人命に関する情報収集を最優先とする。
(イ) 関係者等から、多角的に情報を収集し、危険箇所を把握する。
(ウ) 人命危険の切迫している箇所を救助重点箇所に指定し、優先的に救助活動を行う。
(エ) 人命に関する情報は、不確定情報であっても必ず確認する。
イ 後着の各級指揮者は、最上級指揮者の命令により人命救助活動または火勢制圧活動を行う。
なお、延焼危険のある周囲建物について、逃げ遅れがないことを確認する。
ウ 救急隊が先着となった場合は、人命に関する情報収集を行い、必要に応じて避難誘導等を実施する。
また、負傷者等が無い場合は、最上級指揮者到着後に指揮支援活動を実施し、消火活動は行わないものとする。
(2) 消火の活動は、各隊の連携を密にして延焼拡大防止を主眼とする。
ア 先着タンク車隊は、火煙認知の有無に関わらず現場直近し、先着がポンプ車隊の場合は直近の水利に後着隊の活動障害とならないように部署する。なお、特にはしご車隊及び救助隊等の活動スペース及び進入経路を十分に配意した部署とする。
イ 後着隊は、筒先の不足している面を重点的に防御するとともに、火勢の状況に応じて適切に進入する。
ウ 注水は次により行う。
(ア) 注水は、燃焼実態に対して行い、余裕ホースをとり積極的な移動注水によって効果的に行う。
(イ) 注水の有効範囲を広くとるとともに、火勢の状況に適応した放水器具の活用及び注水種別を選定する。
エ 筒先配備または注水にあたっては、局部破壊等を併用して注水効果を高める。
オ 中継送水にあっては、原則65mmホースを使用する。
(3) 破壊活動は、次により最大の効果を発揮できる場所を選定する。
なお、進入路の設定は、水圧開放シャッター等の設備が設置されている場合、または関係者からマスターキー等の提供可能な場合は、それらを優先的に活用する。
ア 破壊は、原則として最上級指揮者の命令により行う。
イ 破壊箇所は、作業が容易で、二次災害発生危険の少ない部分とする。
ウ 破壊の範囲は、必要最小限度とする。
(4) 災害現場活動は、特に安全の確保に配意し、危険防止に努める。
ア 危険に関する情報は、迅速に全隊員に周知徹底させ危害を防止する。
イ 各級指揮者は、常に活動環境等を的確に把握し、危険が予測されたときは、直ちに必要な措置を講じる。
ウ 各級指揮者は、火煙認知の有無に関わらず、隊員に空気呼吸器の装備指示を行い、危険防止に努める。
エ 隊員は、安全確保の基本が自己にあることを認識して、隊員相互で安全に配意し、危険防止に努める。
(5) 消防団との消火活動は、最上級指揮者の活動方針に基づき、消防団指揮者との連携を図る。また、消防団については、原則、屋外からの注水活動とする。
(6) 最上級指揮者が現場到着し、災害が発生していない若しくは、管轄隊のみ等で対応可能と判断した場合は、出動隊を反転帰署させ減隊させることができる。
(木造・防火造密集地火災)
第4条 人命検索救助活動については、次のとおりとする。
(1) 中隊長は、火点に先行し、火点を一巡しながら、火勢の状況及び要救助者の有無について情報を収集するとともに、関係者等から避難の完了が明確に報告されるまでは、要救助者があるものとして行動する。
(2) 先着消火隊の進入路設定活動
ア 先着消火隊の分隊長は、隊員を指揮して他隊との連携により、積載はしごの搬送及び火点へ第1線のホース延長活動を行い、中隊長の指揮を受け進入路を設定する。
イ 進入路は、出入口または積載はしごの架梯のみに依存せず、工作物等も積極的に利用する。
ウ 送水消火隊の分隊長は、隊員を指揮して吸水措置を行うとともに、ホースを延長して先着消火隊へ送水する。送水完了後は、中隊長の指揮を受け、他隊と連携した人命救助活動または火勢の制圧活動を行う。
(3) 検索・救出活動
ア 班の編成
(ア) 検索班は、照明器具を携行し、救出担当、援護注水担当を含めて編成する。
(イ) 各班長は、進入管理者として、各級指揮者をあて携帯無線機を携行する。
イ 検索活動
(ア) 中性帯が認められる場合で、火勢の状況が確認できないときは、注水を行う前に中性帯を利用して内部の状況を確認する。
(イ) 各班は、検索範囲の分担を明確にし、相互の連携を密にして、検索洩れ、または重複がないよう効果的な人命検索活動を実施する。
(ウ) 濃煙内検索は、検索班ごとに命綱等で安全を確保しながら行動し、検索を終了した場所については、検索完了標示等を行い周知する。
(エ) 検索は、建物出入口周囲、階段口、窓際、行き止まり、便所、風呂場等を重点的に行う。
(オ) 援護注水等を確保するまでの間で次のいずれかの場合に限り、中隊長の判断により屋内での必要最低限度の活動ができるものとする。
a 開口部等から要救助者が視認できる場合
b 進入隊員の活動が監視、制御できる場合
c 開口部付近等で容易に脱出できる場合
ウ 救出活動
(ア) 救出は、要救助者の状態を掌握して、資器材及び地形、地物を利用して行う。
(イ) 多数の要救助者がある場合の救出順位は、危険切迫の者を最優先とし、ベランダ、隣接建物の屋根上等一時的に安全な場所へショートピックアップし、地上への救出は他隊の応援を求める。
(ウ) 救出の必要がない場合、若しくは救出完了した際は、直ちに延焼阻止を主眼とした活動を行う。
2 火勢制圧活動
(1) 消防力劣勢時の活動
ア 路地、空地等を延焼阻止線とし、余裕ホースを十分に取り、少ない移動で放水可能範囲が広くなるよう考慮する。
イ 先着隊は、燃焼熾烈で放射熱(濃煙、熱気)が強い、または建物の倒壊危険等により接近困難な場合は、周囲建物への延焼阻止を担当し、後着隊は放水銃等の活用を考慮する。
ウ 消防力が集結するまでは、重要面に集中配備し、他の面は後着隊が補完する。
(2) 消防力優勢時の活動
ア 風向及び街区状況を考慮して重要面から順次包囲し、全隊に周知した後、積極的に屋内進入を図り、攻撃注水を行う。
イ 大規模木造建物火災にあたっては、優先順位に従って、燃焼範囲を包囲するよう筒先を配備して屋内進入を行う。
(3) 筒先配備活動
ア 街区火災
(ア) ブロック内火災は、火災建物を包囲するように配備する。
(イ) ブロック角火災は、火災建物に面する両側を優先とする。
(ウ) ブロック面火災は、火災建物の背面及び両側面の順とする。
イ 傾斜地火災
(ア) 傾斜地火災にあっては、火災建物より高い斜面に位置する側を重点とし、次に両側面とする。
(イ) Ⅴ字型の低地から出火した場合は、両斜面の中腹側を優先とし、次に両側面とする。
ウ 強風下等の火災
(イ) 前(ア)以外の場合は、火災建物の風下側を優先とし、次いで風横、風上側の順に配備して転戦及び早期離脱できるよう十分な余裕ホースをとる。
(ウ) 火粉の飛散が多い場合は、防火帽の顔面保護板及びしころを適正に活用する。
エ 大規模木造混在街区火災
(ア) 一般街区で出火し、大規模木造建物が近接している場合は、前アからウに関係なく当該近接部分を優先とする。
(イ) 大規模木造建物火災の場合は、大量・高圧放水を併用し、次のとおり配備する。
a 火災熾烈な場合に延焼阻止線を設ける場所は、火災前線に最も近い防火壁、建物の曲角部、屋内の階段室、小屋裏区画の部分とする。
b 隣接建物または街区に延焼危険が大きい側面を優先とし、次いで風下側及び残存部分の多い側とする。
オ 木造、耐火造混在街区火災
(ア) 木造建物から出火し、火災建物に面する側に耐火建物の開口部(窓、換気口、排気口)がある場合は、耐火建物に警戒筒先を配備することとし、警戒解除は、最上級指揮者の命令による。
(イ) 警戒筒先配備時は、建物の延焼危険のある部分を監視、警戒するとともに、カーテン、ブラインド等の可燃物を除去し、当該建物に設けられた屋内消火栓等を積極的に活用する。
カ アーケードのある商店街火災
(ア) 街区の構成または気象状況等により前アからオに準ずるほか、アーケード屋根面に設置してある消火足場及び連結送水管等を有効に活用する。
(イ) 道路全面または大部分を覆う場合は前(ア)によるほか、速やかに排煙口を開放する。
(4) 注水消火活動
ア 注水原則
(ア) 延焼防止に主眼をおき、燃焼実態に注水する。
(イ) 他隊と連携して局部破壊を併用し、有効注水範囲の拡大を図る。
(ウ) 火勢の変化に応じてスプレー注水等の注水種別を変え、広範囲にわたる注水時は、上下左右に筒先を振り、効果的な注水方法をとる。
(エ) 他隊の注水範囲との競合を避け、相互に直接注水できない部分を補うよう広範囲に注水する。
(オ) 内部進入を行う場合は、ストレート注水及びとび口等で屋根材、天井材等上部落下危険物を払い落とす。
(カ) 木造建築物の倒壊を防ぐため、柱と梁の接合部分等を優先的に注水する。
(キ) 注水により他隊員に危害を与えないよう相互に声をかけ合い、部署位置を確認する。
なお、防火帽の顔面保護板及びしころを適正に活用する。
(ク) 建物間に進入可能な空地がない場合は、延焼危険の高い建物に進入し、注水する。
(ケ) 送電中の電線への注水は、感電の危険があるので送電圧による安全距離を保ち注水若しくは、筒先開度30度以上のスプレー注水にて放水する。
イ 延焼防止のための注水
(ア) 消防力が劣勢時において、屋外から隣接建物への延焼を防止する場合には、延焼危険のある建物の窓上部、壁体及び軒先に予備注水を行う。
(イ) 延焼のおそれのある隣接建物内部から延焼防止する場合は、窓の外に筒先を出し、スプレー注水を行うとともに外壁近くの天井を破壊して小屋裏に予備注水する。
(ウ) 天井裏等の伝走火炎を阻止する時は、火先方向から火元に向けて小角度のスプレー注水を駆使して広範囲に予備注水する。
(エ) 防火シャッター等を利用して延焼を阻止する時は、シャッターの冷却を行うとともにシャッターに接する天井付近の点検口若しくは、天井を破壊して延焼危険のある空間部分へスプレー注水による予備注水を行う。
ウ 消火のための注水
(ア) 火煙ではなく燃焼実態(火煙の根元部分)に直接注水を行う。
(イ) 注水は外周から順次中心部に及ぶように移行する。
(ウ) 障害物等で燃焼実態に直接注水できない場合は、天井や壁等を利用した反射注水を行う。
(エ) 大規模倉庫や木造火災で燃焼熾烈で接近困難な場合は、放水銃を活用して射程の長い大量・高圧放水を行う。
(オ) モルタルの剥離または落下危険がある場合は、次の措置を講じる。
a 危険が予想される部分に警戒テープまたはロープ等で立入禁止区域を設定する。
b モルタルに膨らみを生じた部分は、周囲の安全を確認して強制的に落下または倒壊させる。
(カ) アーケードのある商店街火災では、地上からの注水は死角が多く有効でないため、アーケード上部に活動拠点を設け火勢を制圧する。
エ 援護注水
(ア) 濃煙、熱気の室内に進入する隊員を防護するための援護注水は、スプレー注水(筒先開度30度から60度程度)で隊員を援護するように注水する。
なお、進入隊員との距離等により筒先開度及び筒先圧力を調整し、有効な援護となるよう注水する。
(イ) 強い放射熱から隊員を防護する場合は、熱源と隊員の間に広角度(80度から90度程度)のスプレー注水を行い遮熱する。
(ウ) 要救助者を輻射熱等から防護する時は、前(ア)、(イ)に準ずる。
(エ) 常に注水するのではなく、急激な延焼拡大等の不測の事態が発生した場合や、不測の事態が発生する危険性がある場合に、延焼状況に応じて注水を実施する。
3 破壊活動
(1) シャッターの解錠または破壊活動
ア 重量シャッターの解錠及び破壊は、次のとおりとする。
(ア) 関係者等から操作方法を確認し、屋外または屋内の電動巻き上げスイッチを操作、若しくは手動巻き上げにより開放する。なお、防災センター等から遠隔操作により解錠及び開放可能な場合は、直ちに関係者に操作させる。
(イ) 停電または内部進入不能な場合は、エンジンカッター等の破壊器具により、進入開口部を設定する。なお、非常電源により解錠及び開放する際は、全てが全開放ではなくシャッターごとに開放範囲が異なるため、留意すること。
(ウ) 水圧開放装置が設置されている場合は、定められた圧力で注水し、解錠した後、開放すること。
イ 軽量シャッターの解錠及び破壊は、次のとおりとする。
(ア) 屋外から解錠した後、屋内で手動操作により開放するものや電動により解錠、開放するものがあるため、関係者等から解錠方法を確認し、屋内進入して開放する。
(イ) 内部進入不能の場合は、次のとおりとする。
a 中柱式シャッターは、中柱を外して開放する。
b 開放不能な場合は、エンジンカッター等の破壊器具を活用して進入開口部を設定する。
(ウ) 水圧開放装置が設置されている場合は、定められた圧力で注水し、解錠した後、開放すること。
(2) ラス下地モルタル壁の破壊活動
破壊予定位置のモルタル壁部分を大ハンマー等でモルタルを砕き、ペンチ等によりラスを切断して必要な範囲を開口させる。
ア 天井の破壊活動
(ア) 通常、押入れ天井には点検口が設置されているため、この部分を突き上げて開口する。
(イ) 室内の天井を破壊する場合は、とび口等を活用して部屋の角部分または壁に近い位置から開口する。
イ 屋根の破壊活動
(ア) 瓦葺屋根は、屋根の頂部(棟)近くから瓦を外して野地板を切断して開口する。
(イ) 鉄板葺屋根は、鉄板同士の接合部にとび口を打ち込んで引き剥がし、野地板を切断して開口する。
(ウ) スレート葺屋根は、野地板が無い場合が多いので、足場を確保して開口する。
4 飛火警戒活動
(1) 飛火警戒は、住民、消防団員と協力して飛火火災の予防、広報及び高所からの見張り及び高所監視カメラ等により飛火の早期発見、鎮圧に努める。
(2) 最上級指揮者は、必要に応じて各級指揮者の中から飛火警戒隊長を指定し、必要に応じて巡回広報班等を編成する。
(3) 警戒拠点は、火元建物の風下側100mから150mの範囲で適当な位置に設定し、現場指揮本部との連絡手段を確保する。
(4) 高所からの見張り箇所は、高層建築物の屋上及びはしご車等を利用して設定し、火粉の飛散落下の状況把握、飛火による火災等の発見に当たり、その状況を携帯無線機等により飛火警戒隊長へ報告する。
(5) 巡回広報班は、2名1組で編成し、主にポンプ車でも進入できない道路、路地裏などを巡回警戒するとともに、携帯拡声器等を活用して、付近住民に協力を求める。また、状況に応じて、消火器等の準備も行う。
(6) ポンプ車等による巡回広報は、五感を働かせ警戒に当たるとともに車載拡声器を活用して、付近住民に注意喚起する。
(7) 飛火警戒隊長は、火粉の飛散状況、警戒実施状況を最上級指揮者に定期的に報告する。
(8) 飛火警戒隊長は、飛火火災を覚知した時は、その旨を直ちに最上級指揮者へ報告するとともに消防指令センターへ連絡を行い、必要な措置を講じる。
(9) 火粉の飛散方向及び範囲は、夜間は容易に視認できることが多いが、昼間にあっては、微細な火粉等は視認不可能であるため、十分注意する。
(10) 飛火警戒は、当該火災が鎮火するまで実施するものとし、警戒態勢の縮小、解除は最上級指揮者の命令による。
(11) 最上級指揮者は、引揚げに際し、消防団、住民等に対して警戒の実施状況を広報し、取り込んだ衣類や布団等の再確認について協力を求める。
5 再燃防止活動は、泉州南消防組合再燃防止規程(平成25年泉州南消防組合消防長訓令第14号。以下「再燃防止規程」という。)に基づき、以下のとおり実施する。
(1) 残火処理活動
ア 筒先相互に連絡を取り、担当範囲を決めて残火処理を行う。
イ 筒先圧力を低減させ、筒先を操作して外周部から中心部へ、高所から低所へ順次移動して範囲を縮小する。
ウ 必要によりホースを増加し、拡散またはスプレー注水等を多用し、注水障害物の移動、落下危険物の除去を行いながら実施する。
エ 合掌、梁裏、壁間等、注水の死角となる場所は、小破壊の併用または移動注水により消火する。
オ 可燃物が堆積している場所は、筒先を差し込むか、掘り起こして消火する。
カ 繊維、綿、布団類等、水切れとともに再出火するおそれがある物品は、屋外の安全な場所に搬出する。
キ 過剰な注水を避け、水損防止に配慮する。
ク モルタル等の壁間の潜伏火源は、壁体の温度を素手の感触で確かめ、温度の高い箇所の上部を破壊して確認する。
ケ 夜間または暗い場所等では投光器等による照明を確保する。
コ 屋根瓦等の落下、モルタル壁、柱、梁等の倒壊、床の焼け抜けに注意し、危険箇所は必要に応じて警戒テープ、ロープ等で標示する。
サ 主要道路等をホースが横断している場合は、活動状況及び交通渋滞を考慮して適宜、部署位置を変更し、通行規制を解除する。
シ ぼや火災の建物等で、未燃焼部分の壁体等、破壊によらなければ確認できない場合は、必要最小限度に留める。
ス 鎮火判定のための破壊及び注水を行う場合は、事後のトラブル発生を防止するため、努めて関係者を立ち会わせる。
(2) 関係者等に対する説明
(ア) 火元消防対象物の関係者
(イ) 延焼された消防対象物の関係者
(ウ) 強い放射熱を受けたと予想される消防対象物の関係者
(エ) 前(ア)から(ウ)に掲げる関係者に関わる従業員、親戚、知人等
(ア) 依頼書の交付に際しては、口頭で危険と思われる場所の具体的危険性について説明する。
(イ) 説明した関係者の管理区分及び氏名等を可能な範囲で聴取し、記録する。
(3) 監視、警戒
ア 消防警戒区域設定の場合
火災原因調査のため、火災に引き続き消防警戒区域を設定して現場の保全を行うときは、現場保存にあたる警察官若しくは消防団員が再燃等について監視警戒の協力について了承した場合を除き、消防職員が監視警戒に当たる。
イ 現場保全区域の設定
火災原因調査のための消防警戒区域を設定しない場合は、事実行為として現場保存区域を設け、関係者に現場の保全及び緊急時における必要な措置について協力を求める。
ウ 関係者が不在となる場合
(ア) 現場保存にあたる警察官または、近隣住民に火災建物(延焼建物含む)について、監視警戒等の協力を求める。
(イ) 消防団員に対して巡回及び緊急時の措置について依頼する。
(ウ) 必要と認められる場合は、随時巡回を行う。
(耐火造建物火災)
第5条 情報収集活動については、次のとおりとする。
(1) 対象物の状況(内部構造、用途、収容物、階段の種別位置、防火区画、エレベーター及び空調の停止、並びにダクト、パイプシャフト、エスカレーター等縦穴の位置)を把握し、延焼経路を判断する。
(2) 災害の実態(火点、延焼範囲、煙の拡散状況、シャッター、防火戸、防火ダンパー等の開閉状況及び消防用設備等の作動状況)を把握し、活動方針を決定する。
(3) 避難者の状況及び逃げ遅れの有無を把握し、検索、救出の重点箇所を決定する。
(4) 危険物、爆発物の有無、二酸化炭素消火設備等の作動状況及び変電設備等の状況を把握し、作業危険の有無を全出動隊に周知徹底する。
(5) 排煙設備等の建築設備及び消防用設備等の状況を把握する。
ア 防災センターにおける状況把握
(ア) 屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備等の設置及び作動状況
(イ) 消防用水、連結送水管及び連結散水設備の設置状況
(ウ) シャッター、防火戸、排煙設備等の設置及び作動状況
(エ) 非常用エレベーターの運転状況
イ 自動火災報知設備、非常警報設備、無線通信補助設備等の設置状況の把握
2 人命救助活動
必要に応じ援護注水、照明等を併用する。
(1) 屋内進入路設定活動
防火戸、防火シャッター等の解錠または破壊を併用し、屋外階段、特別避難階段、避難階段、非常用エレベーター等を活用して屋内への進入路を確保する。
(2) 屋外進入路設定活動
ア ポンプ隊等は、原則として3階までの架梯可能箇所に積載はしご等を活用して架梯し、進入路を確保する。
イ はしご車隊の活動は次のとおりとする。
(ア) はしご車隊は、建物の構造、消防活動空地、階層及び要救助者の状況を車両端末装置及び関係者等からの情報を加味したうえで把握し、はしご車等の性能を最大限に発揮できる場所に部署する。
(イ) 架梯障害等により火災建物に直接架梯できない場合は、積載資器材及びはしご車に送水しているポンプ隊等の積載はしごやロープ等を活用し、架梯障害を排除して進入路を確保する。
(ウ) 内部進入のための拠点は、原則として濃煙、熱気の噴出量が少ない風上または風横側に設定する。
ウ 非常用進入口が設置されているときは、優先的に活用する。
エ 非常用進入口が設置されていないときは、車両の部署位置、活動空間を考慮し、窓の位置、大きさ、活動障害等を把握して最も効果的な場所に進入口を設定する。
オ 火点室に進入口を設定する時は、火点階の廊下及び階段室出入口扉を閉鎖するか、スプレー注水により、階段室へ煙が流入しないように措置する。
カ 窓ガラスを破壊する場合は、落下物による危害防止のため、地上高さの2分の1を半径とする立入禁止区域を設定する。
(3) 検索・救出活動
ア 前条第1項第3号に掲げる検索・救出活動を準用する。
イ 現場到着時、窓側等に多数の逃げ遅れがいるときは、はしご車等を活用して救出する。
ウ 階段室の排煙、排熱を行い、主たる進入・救出路として設定する。
(ア) 火点階及び上階の階段室廻りの出入口扉を閉鎖する。
(イ) 階段室屋上出入口または最上階の開口部で風下、風横側に面する部分を開放する。
(ウ) 火点室の風下、風横側の窓を開放して火点室を減圧する。
エ 火点階に要救助者がいるときは、階段室出入口部分でスプレー注水を行い、階段室に煙が流入しない措置を講じるとともに、検索班は援護注水及び照明を併用して積極的に救出活動を行う。
3 火点検索活動
(1) 煙の滞留する最下階付近を最重点として火点を検索する。
(2) パイプシャフト、ダクトスペースの内部または天井裏等を点検して煙の流動状況を確認し、煙の流れに逆行して検索する。
(3) 火点が確認できない場合は、床、壁、ダクト等を素手等で触り、温度の高低を確認する。
4 火勢制圧活動
必要に応じて局部破壊を併用する。
(1) 活動拠点確保活動
ア 火点階付近に設ける活動拠点は、特別避難階段附室、避難階段及び防火区画出入り口付近等の煙の流入等がない箇所を優先する。
イ 活動隊が設定した窓際等の活動拠点に、資器材等を搬送し活動拠点の確保及び支援を行う。
(2) 火煙の抑制活動
ア 空調設備の運転状況を確認し、必ず運転を停止させる。
イ 筒先配備が整うまでの措置として階段を利用して火点階に進入し、屋内消火栓設備を活用するか、または火点室に消火器を放射して出入口扉を閉鎖し、一時的に火勢を抑制して火煙の閉じ込めを図る。
(3) 消火活動
ア 先着となるポンプ隊等は、連結送水管、連結散水設備及びスプリンクラー設備が設置されているときは、既定された送水圧力で当該設備送水口に送水する。
なお、スプリンクラー設備については、配管破損等の危険が考えられるため、必ず作動状況を確認したうえで送水すること。
イ 他隊と連携を密にして活動拠点に筒先を配備し、局部破壊を併用しながら効果的な消火を行う。
ウ 筒先進入にあっては、連結送水管を最大限に活用する。
エ 大空間の室内火災で火勢熾烈な場合は、入口部分でスプレー注水を行い、濃煙、熱気の噴出を抑制しながら、別表第3を参考に射程の長い大口径ノズルを配備して、ストレート注水で火勢を制圧する。
オ 注水にあたっては、広範囲に散水するように天井または壁体を利用した反射注水を多用する。
カ 燃焼熾烈な室内に注水するときは、室内の高温域にスプレー注水または噴霧注水を行い、水蒸気化による間接消火法を活用する。
キ 地下室火災にあっては、次のとおりとする。
(ア) 給排気階段を見定め、給気階段側から進入する。
(イ) 給気階段が明らかでないときは、スプレー注水及び噴霧注水または、可搬型ブロアー等を利用して、階段室を加圧し進入路を設定する。
(ウ) 給気階段等から化学車等を活用して、高発泡を利用し消火、排煙を行う。
(エ) 給気階段が明らかでなく進入困難な場合は、火点上階の床を破壊して開口部を作り、直接消火を行う。
5 警戒筒先配備活動
(1) 筒先配備活動
ア 建物内部で延焼経路となりやすい次の箇所に警戒筒先を配備する。
(ア) 縦穴構造
a 複数階の吹き抜け部分
b ダクトスペース及びパイプシャフトの床貫通部分
c エレベーター、ダムウェーター、エスカレーター部分
d 床スラブとカーテンウォールの接合部分
e ダストシュート、エアーシュート、リネンシュート部分
f 厨房、浴室、便所等の排水管部分
(イ) 横穴構造
a ダクトまたはパイプ等の防火区画貫通部分
b 防火シャッターの天井裏部分
c 界壁の天井裏部分
イ 建物外部から上階へ延焼経路となりやすい次の箇所に警戒筒先を配備する。
(ア) 火点室横や上階へのスパンドレル
(イ) ベランダ上の可燃物
(2) 警戒活動
ア 隊ごとの警戒を担当する区域を明確にし、縦穴または横穴等の有無を確認し、延焼経路となるおそれのある箇所を判断する。
イ スパンドレルからの上階延焼に備え、窓際のカーテン、ブラインド等を除去する。
ウ 自隊の筒先のみでなく、屋内消火栓等を積極的に活用する。
エ 警戒を担当する階または出入口や窓を開放して、煙の上昇経路を把握し、噴煙箇所に予備注水する。
オ 最上級指揮者から警戒解除命令があるまでは、担当区域を絶対に離れない。
6 水損防止活動
(1) 水損防止は、火点直下階を最優先とし、防水シート等を活用する。
(2) 発電設備、変電設備、コンピューターシステム室等の上階は、関係者等の協力を得て特に入念に措置する。
(3) 地下室への消火水の流入を防止する。
(危険物・油脂火災)
第6条 活動原則については、次のとおりとする。
(1) 必要な消火薬剤が確保されるまでは、隣接建物等への延焼防止を主眼とするとともに、河川及び下水・側溝等への油の流入防止を図り、流出した油への延焼にも留意する。
(2) 安全な場所で関係者から情報収集を行い、不用意に構内へ進入せず、火災の状況、危険物等の特性である爆発危険や有毒性の有無等を的確に把握する。特に、高度化・複雑化した工場等については、専門的な知識と経験を有する事業所から積極的に情報収集を行う。なお、泉州南消防組合危険物類別消防活動要領及び別表第1の消火薬剤の特性等を参考に使用する消火薬剤を選定し、危険物の流出、爆発、引火、気象条件等により様相が急変しやすく、高圧ガスや毒劇物等を貯蔵または取扱っていることが多いため、不測の事態が発生することを念頭において、進入路及び注水箇所を選定する。
(3) 大規模な油脂火災にあっては、努めて放水銃(砲)を活用して放水し、接近して放水する際は、耐熱服を着装した状態で、スプレー注水の援護のもと行う。
(4) 化学車及び泡放射筒先は、風上側から接近し、延焼面の手前から集中的に泡放射して、進入路及び退路を必ず確保し、急激な火炎拡大に留意する。
また、有毒ガスが発生するおそれのある火災の場合は、必ず空気呼吸器等の必要な装備を着装し、引火、爆発性ガスの発生についても留意し活動する。
(5) 本条に記載されているもののほか、泉州南消防組合危険物類別消防活動要領に基づき活動する。
2 屋外貯蔵所火災の消火活動
(1) ドラム缶を集積した屋外貯蔵所等の火災にあっては、ドラム缶の側面から接近して泡放射する。
(2) 積みドラム缶の火災は、ドラム缶の高所に対して泡放射し、泡の自然流下を利用して消火し、平らな側面が爆発により飛散することに留意し活動する。
(3) 過熱されたドラム缶等を移動させる場合は、十分に冷却した上で衝撃を与えないよう十分に留意する。
3 屋外タンク貯蔵所火災の消火活動
(1) 泡放射を活用して防油堤内に放射する。
(2) 放水銃等を活用して高所からタンク内へ泡放射をする。
(3) 広範囲に注水するのではなく、火災による上昇気流の少ないタンク側面内面付近の油面に集中して注水する。
(4) はしご車または放水銃を活用して、隣接タンクの油面より高い位置にある側板を冷却注水する。
(5) 泡放射は中断すると消火効果がなくなるので、消火まで継続放射する。
(6) ボイルオーバー現象またはスロップオーバー現象等に注意して行動する。
4 プラント火災の消火活動
(1) 製造所、一般取扱所等の火災に対する消火活動は、施設の高所を目標に放射する。
(2) 隣接建物等への延焼するおそれがある場合は、筒先員と連絡を密にして冷却注水する。
5 移動タンク貯蔵所火災の消火活動
(1) 燃焼実体への接近は、耐熱服の着装、堅固な地物等による遮蔽及び援護注水を実施し、放射する。
(2) 地下室、共同溝及び下水・側溝等への着火油、未着火油及び蒸気の流入に留意する。
6 流出油火災の消火活動
(1) 原則として風上から放射する。
(2) 外周から内部に押し戻すように放射する。
(3) 油の流出範囲が広範囲に拡大するときは、土のう等でせき止め、局限化を図りながら消火する。
(4) 直接油面には放射せず、地物に反射するように放射する。
(5) 反射に利用する地物が無い場合は、筒先の仰角を上げて、上方から降り注ぐように拡散放射する。
7 水溶性の溶剤火災における消火活動
(1) 合成界面活性剤以外の泡消火薬剤を要請する。
(2) アルコール類の炎は、明るい場所では判別しにくいので、隊員等の接近による受傷を防止する。
(都市ガス等による災害)
第7条 活動原則については次のとおりとする。
(1) ガス漏れ及びガス爆発等の災害実態を踏まえ、関係機関と密接な連携のもと活動する。
(2) 二次災害の発生及び被害拡大の防止を主眼に活動し、付近住民、災害防除に従事する他機関並びに消防隊の安全を確保する。
2 屋内におけるガス漏洩事故に対する消防活動
(1) 現場到着時の初動措置活動
ア 先着隊情報収集活動
(ア) 現場到着した消防部隊は、ガス漏洩事故発生地域の付近住民から事故状況を聴取する。
(イ) ガス事業関係者及び消防部隊の有するガス検知器を活用、または嗅覚によりガス漏洩範囲を推定する。
(ウ) 消防車両は、二次災害に備え、風上または風横側の水利に部署する。
(エ) 最上級指揮者が後着となる場合は、先着の各級指揮者は車載無線機により連絡をとり、最上級指揮者の指示を受ける。
イ 火花を発する機器の使用禁止
ガス滞留地域においては、火花を発するおそれがある携帯無線機の発信、非防爆型の照明器具のスイッチ操作及び電話等の使用を厳禁とする。
(2) 火災警戒区域の設定活動
ア 警察官に対する協力要請
(ア) ガス滞留地域及びその周辺について、速やかに火災警戒区域を設定する。
(イ) 消防法(昭和23年法律第186号)第23条の2に基づき、現場警察官に対して、火災警戒区域の設定範囲を説明し、作業関係者以外の者に対する立入禁止または制限について協力を求める。
イ 現場広報
火災警戒区域内における火気使用の禁止、電気・ガスの一時供給停止等について広報し、住民の協力を求める。
ウ 避難指示
避難が必要と認められる範囲の者に対して避難を指示する。通常は、ガス漏洩が認められる住戸の住民を最優先として、その他は爆風圧によるガラス等の飛散による受傷危険のある者に対しては、出入口扉または窓際等に近寄らないよう指示する。
最も危険度の高い住民避難は、直接消防部隊が誘導し、その他の住民に対しては、車載拡声器または非常放送設備等を利用して注意喚起を行う。
(3) 電路の遮断確認活動
ア 電気事業関係者によるもの
電気事業関係者が現場に到着したときは、火災警戒区域の範囲を示して電路遮断を指示する。この場合、停電範囲に病院または電子計算機、エレベーター等の特殊機器を使用している対象物が含まれているときは、広報によって周知徹底を図り、停電に伴い重大な支障を及ぼさないように配慮する。
イ 消防部隊によるもの
原則、電気事業関係者による遮断が望ましいが、現場に到着せず緊急に措置する必要があると認める場合は、消防部隊が必要な防護装備により可能な範囲で、主開閉器等による電路遮断を行う。なお、電気事業者の関係施設の復旧は、当該関係者に要請する。
(4) ガスの遮断確認活動
ア ガス事業関係者によるもの
ガス事業関係者が到着した時は、火災警戒区域の範囲を示してガス停止弁またはガスメーターコック等の閉鎖を指示する。
イ 消防部隊によるもの
ガス事業関係者が現場におらず、緊急措置する必要がある場合は、消防部隊は可能な範囲で住戸外にあるガスメーターコック等を閉鎖してガスを遮断する。
なお、ガス遮断後の復旧は、生ガス放出等の危険があるため、ガス事業関係者に要請する。
(5) 室内ガスの排除活動
ア 消防部隊は、電気、ガスの供給が遮断された後、室内に滞留するガスを排出する。
(ア) 外気開口の設定にあたっては、必ず風下または風横側の出入口扉またはガラス窓を選定する。
(イ) 建築構造体(内装を除く)のうち、出入口扉、窓等の開口部及び無筋のパネルまたはブロック壁部分は強度が無く爆風圧により大きな被害を受けるおそれがあり、隊員の接近及び作業位置は、柱形部分または鉄筋コンクリート壁部分で、かつ飛散物等による被害が最小限となる場所を選定する。
(ウ) ガス漏洩現場における隊員の服装は、防火衣を着装し防火帽の顔面保護板及びしころを適正に活用して活動するとともに、静電気発生防止に配意する。ただし、ガスが滞留する住戸へ接近する隊員については、爆発に伴う膨張気体に触れた場合の熱傷を防止するため、努めて耐熱服を着装する。
(エ) 外気開口の設定方法は、次のとおりとする。
a 出入口扉等が施錠されていない場合、または合鍵等で容易に開放できる場合は、前(ア)に示す風下または風横側であることを確認し、爆発が起こっても被害を受けることが少ない前(イ)の場所に身を隠して開放する。
b 前(ア)による外気開口ができず、窓ガラスを破壊する場合は、前(ア)の窓を選定し、前(イ)の位置からとび口の柄部分でガラス面を打撃し、全面破壊する。ただし、網入りガラスでとび口の金属部分を用いて破壊するときは、窓枠を打撃するなど火花を発しないよう配意する。
(オ) 外気開口を設定したときは、原則として外気開口後、5分間は室内に進入しない。ただし、LPガスについては、空気比重が1.5から2.0と重く、流出速度が遅いことから、外気開口の設定後、概ね5分経過後、風上側にも開口部を設定して風通しを良くする。
イ 前アによりガスが排出された後に速やかに要救助者の有無を確認する。
3 屋外におけるガス漏洩事故に対する消防活動
前2項によるほか次のとおりとする。
(1) 現場到着時の初動措置活動
ア 消防車両の部署位置は、水利が遠距離となっても風上または風横側で下水溝、マンホール及び工事現場等における覆工板等の上を避けた安全な位置に水利部署する。
なお、ガスの漏洩が広範囲にわたるときは、危険範囲を包囲するように部署し、特に風下または風横に部署した消防隊は、風向の変化に留意する。
イ 地中導管からガス漏洩している場合は、ガス事業関係者からの情報及び消防部隊の有するガス検知器を活用、または嗅覚により付近の建物内を含めてガス漏洩範囲等を推定する。
ウ 漏洩ガスの種別及びガス中毒者、負傷者の有無を確認する。
(2) ガスの拡散排除活動
ア 下水溝、掘杭等地下施設物にガスが充満している場合は、マンホール、覆工板等を可能な限り取り除き、ガスの拡散を図る。
イ LPガスボンベからガスが噴出している場合、低温となった当該ボンベに注水すると逆に水温で温められ、ガスの噴出量を増加させることになるため注意する。
また、転倒しているボンベからは、液状で噴出するため可能な範囲で風上側から接近してバルブ閉鎖等行い、漏洩防止処置を行う。
ウ LPガスボンベからの漏洩ガスは、風の影響を受けて流動拡散するほか、低所に滞留しやすく、特に噴出点付近からマンホール、側溝等を伝わり流動するおそれがあるため、積極的にガス流動方向の風横側から高圧スプレー注水(開度60度でノズル圧力0.6Mpa以上)を行い、ガスを拡散させ排除する。
エ 地下施設に流入したガスは、風向きと関係なく遠方に流れ、予想しない場所で二次災害が発生するおそれがあるので、地上への換気口等のガス濃度に注意する。
オ 隊員の服装は、防火衣を着装し、防火帽の顔面保護板及びしころを適正に活用して活動するとともに、静電気発生防止に配意する。なお、ガスが滞留する地域へ進入する場合は、努めて空気呼吸器及び耐熱服を着装し、静電気発生防止に配意して活動する。
4 屋外において噴出ガスに着火炎上している場合の消防活動
(1) 漏洩中の都市ガス等に着火炎上している場合は、不用意に消火すると生ガスが噴出し、広範囲に拡散するため、近隣建物等の延焼阻止を主眼として、炎上ガスについては、緊急遮断による自然鎮火を待つ。
(2) 中圧管等で噴出圧力が高い場合は、むしろ等を被せ噴出圧力を弱めるとともに、その上から消火させないようスプレー注水を行って火柱を低く抑え、延焼防止等の消火活動を容易にする。
(3) 単独のLPガスボンベから噴出ガスが炎上している場合は、炎の噴出方向の反対側から接近し、バルブを閉鎖する。
(4) ボンベ集積所等で炎上している場合は、誘爆を防止するため、地物等を防護壁として放水銃等により遠距離からの大量冷却放水を行う。
(高速道路等)
第8条 高速道路等の火災、救急及び救助等の消防活動要領については、高速道路等における消防活動要領によるものとする。
(応援出動)
第9条 本訓令は、火災防御活動等の充実強化を図るものであるが、危険物等漏洩や爆発等を伴う複合的な災害となることを鑑み、本訓令と他の活動要綱等を組み合わせて総合的に対応し、早期に部隊の増隊要請、他の地方公共団体及びその他の行政機関との間に締結した各協定に基づき実施するものとする。
(その他)
第10条 本訓令に基づき、警防訓練等を実施し、各火災事案等の特性に関する知識及び資機材などの習熟に努め、詳細な活動手順等は総務省消防庁及び大阪府からの通知等を参考とすること。
第11条 本訓令に定めるもののほか、必要な事項は別に定める。
附則
この訓令は、令和4年4月1日から施行する。
別表第1
泡消火薬剤の種類 | たん白泡消火薬剤 | 水成膜泡消火薬剤 | 合成界面活性剤泡消火薬剤 |
たん白泡消火薬剤 | 同時使用による泡割れのおそれ有 | 同時使用不可 | |
水成膜泡消火薬剤 | 同時使用による泡割れのおそれ有 | 同時使用不可 | |
合成界面活性剤泡消火薬剤 | 同時使用不可 | 同時使用不可 |
別表第2
各筒先放水量曲線
別表第3
各筒先の筒先圧力別最大射程距離表 | |||||||
筒先種別 | 圧力 口径等 | 0.2Mpa | 0.3Mpa | 0.35Mpa | 0.4Mpa | 0.5Mpa | 0.7Mpa |
可変噴霧ノズル | ノズル口径 10φ | ― | 15m | 16m | 17m | 19m | 21m |
ノズル口径 13φ | ― | 20m | 21m | 22m | 26m | 29m | |
ノズル口径 15φ | ― | 22m | 24m | 25m | 29m | 33m | |
ノズル口径 19φ | ― | 25m | 28m | 30m | 35m | 40m | |
ノズル口径 23φ | ― | 28m | 31m | 33m | 37m | 45m | |
ガンタイプノズル | 流量レンジ 110L/min | 15m | ― | 20m | ― | 25m | 27m |
流量レンジ 230L/min | 19m | ― | 25m | ― | 27m | 30m | |
流量レンジ 360L/min | 21m | ― | 28m | ― | 33m | 38m | |
流量レンジ 470L/min | 23m | ― | 32m | ― | 37m | 42m | |
スムースノズル | ノズル口径 20φ | 15m | 27m | 29m | 30m | 37m | 45m |
ノズル口径 26φ | 17m | 29m | 31m | 33m | 39m | 48m |
※最大射程距離とは、有効射程距離ではなく射上角35度での最大数値をいう。
可変噴霧ノズル及びガンタイプノズルについては、カタログ値を記載しており、スムースノズルについては、実測値を記載。